2014年11月24日月曜日

現代日本画展関連ワークショップ 「日本画家・神戸智行と長良川の川原を語る・歩く・描く」

展覧会関連イベント第1弾として、岐阜市ご出身で本店出品作家の神戸智行先生によるワークショップが11月2日に行われました。
今回のワークショップは長良川おんぱく2014のプログラムの1つです。
主催は岐阜バス、共催におんぱく事務局、そこに関連ワークショップという形で岐阜県美術館も参加しています。
ワークショップのタイトルは「日本画家・神戸智行と長良川の川原を語る・歩く・描く」
タイトルの通り、神戸智行先生と長良川を語って、歩いて、絵を制作するというものです。

はじめに「語る」
「語る」は展示作品の前で神戸先生ご本人によるギャラリートークです。
トークでは作品に関する先生の思い出やテーマ等、たっぷりと聞くことができました。



















次に「歩く」
「歩く」は今回の出品作《僕のいる場所》の題材になっている長良川を歩きます。
長良川まで路線バスを貸切り、遠足気分で出発です。
車中では先生から岐阜いちごの飴を差し入れていただき、とても楽しい時間でした。












 

長良川に到着!
みなさん、真剣に水面や石、植物を見つめスケッチなどしていました。

 
 
そして「描く」
神戸先生から「日本画」について顔料となる鉱物や膠、金箔に触れながら説明を聞き、絵の具の使い方を学びます。















 

いよいよ本番、絵を描いていきます。




 
 
 
神戸先生に指導を受けながら、思い思いの「長良川」の絵を完成させました。
 


















最後に記念写真を!
みなさんにっこり、いい笑顔ですね!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 

参加者の方々が描いた作品は、先生の作品とともに展示室に飾られています。
展示作業は閉館後も残ることの出来た参加者と先生、当館職員で行いました。
 
「今をいろどる~現代日本画の世界」展は12月14日までです。
是非、岐阜県美術館でしか見ることのできない長良川の風景をご覧下さい。
 
 
次回、関連ワークショップは長谷川喜久先生による「椿を古墨と朱で描く」(※申し込みはしゅうりょうしました。)です。
 
(c.s)

2014年11月10日月曜日

「今をいろどる~現代日本画の世界」(2)・サテライト 長谷川喜久展

「今をいろどる~現代日本画の世界」展は、岐阜県美術館が所蔵する日本画の作品がおおよそ3分の2、寄託作品を含めた個人蔵の日本画が3分の1くらいで構成されています。つまり、この会場は、当館の日本画コレクションの質と量がいかなるものであるか、問われる場でもあるわけです。もちろん30年以上のコレクションの歩みをふまえて、自信をもってお見せできる内容として企画した展覧会なので、ぜひ会場を見て当館のコレクションの規模を実感していただきたいと思っております。



展示作品としては、岐南町出身の日本画家・長縄士郎さんの《店粧》(1952年作)が一番早い制作になります(写真の一番左側の作品)。この作品に描かれているのは、戦前から岐阜市の繁華街・柳ヶ瀬の中心部にあり、1945(昭和20)年の空襲で全焼し戦後に復興した、丸物(まるぶつ)百貨店の売り場です。長縄さんの若い頃の出発点であると同時に、高度経済成長期へ向かっての岐阜の目覚ましい復興を物語る、岐阜県の歴史的にも重要な作品です。会場はこの《店粧》から始まり、神戸智行さんら若手の画家による2014(平成26)年制作の新作まで、おおよそ時代の流れに沿いながら、作家ごとにまとまったコーナーを作りつつ展示をしています。それぞれの画家の略歴と作品の特徴は、作品の近くに配した解説パネルで簡略に触れています。

また、出品作品の中から20点を選んで短い解説を記した、A5サイズの鑑賞ガイドを作りました。この鑑賞ガイドは、展覧会鑑賞者のうち、ご希望の方に無料で配布しています。
















その他、会場のトピックをご紹介しましょう。



会場の半ばあたりで、土屋禮一さんの作品を8点まとめて展示しています(禮の正しい字は「ネ」に「豊」)。岐阜県養老町出身の土屋さんは、武蔵野美術大学で日本画を学び、現代日本画壇の中心的作家として活躍するとともに、日展副理事長として団体を率いる立場にもある、重鎮の一人です。
岐阜県美術館が所蔵する土屋さんの作品は、1960年代の若い頃から今年新たに収蔵した2012(平成24)年の作品まで約30点あるのですが、今回はチラシに掲載した《雲》(写真では一番左)や、鑑賞ガイドで紹介した《桜樹》(左から3番目)、《龍魚―阿》《龍魚―吽》(右側の2点)など、1990年代、2000年代の近作を中心に構成しました。特に近年の、墨と対話を楽しむように自由に心を遊ばせながら制作した水墨画からは、瑞龍寺本堂障壁画《蒼龍図》(1998年作)等から20年近くかけて追求してきた墨の表現の深まりが伝わってきます。

また、所蔵品展示室のうち、展示室2を「現代日本画の世界展 サテライト」会場として、長谷川喜久さんの作品15点による特集展示を同時開催しています。



「今をいろどる~現代日本画の世界」展の準備段階で、活躍中の作家の近作・新作を構成に加えようと考えた時に、長谷川さんは真っ先に依頼を検討した作家でした。
岐阜市出身の長谷川さんは、金沢美術工芸大学大学院で日本画を学び、現在も岐阜市に在住して、日展を中心に作品を発表しています。2009(平成21)年に当館で開催した「Artのメリーゴーランド」展に出品していただいた時は、会場のトップのコーナーで作品を紹介しました。
今回の特集展示のきっかけとなったのは2011(平成23)年の展覧会です。この年、長谷川さんは上海美術館で個展を開催。その帰朝記念展が、岐阜市の加藤栄三・東一記念美術館で開催されました。この帰朝記念展の印象が非常に鮮やかで、人物・風景・花鳥とさまざまな題材を現代的な感性で描いた作品の魅力に感じ入り、岐阜県美術館でもいつかまとまった形で展示したいと思っていました。その後、日本画の自主企画展を2014(平成26)年に実施することになったため、何人かの作家にコンタクトをとるに際し、この機会をいかして、同じ会期でサテライト展示として長谷川さんの作品を紹介しようと考えました。館内で方針を相談したところ「展覧会として見てみたい」という意見が多く、それらの声に背中を押してもらって、協力をお願いして快諾をいただき、この特集展示が実現できました。
会場が変わると、作品の見え方、印象も変わります。サテライト展示では、天井が高く、部屋全体が明るめの展示室2を会場とすることが決まっていました。したがって小品よりも大作を中心にして、近作に焦点を絞り、1997(平成9)年の《―DOME―(あらかじめ失われた鳥達の宮殿)》から、墨彩画の新作《青月図屏風》まで15点を選びました。ゆったりとした空間で、特に色彩の美しさを意識して、一点一点を際立たせて見せよう、と展示を試みています。

このような小規模の個展形式で現代の中堅作家を紹介するのは、岐阜県美術館にとっても初めての試みです。美術館の重要な役割の一つに、同時代の美術を、効果的な時期・場所・構成によって紹介することがあると思います。昨今の社会的・経済的事情の中で大規模企画展の実現が難しくなっている現在、個別の展示室の規模で行う特集展示は、フットワークが軽く、さまざまな観点の企画を実施できるものと考えます。同時代美術の紹介をこのような特集展示で行う試みは、今後も機会があれば継続していきたいと思っています。(青山)

「今をいろどる~現代日本画の世界」(1)

1031日から「今をいろどる~現代日本画の世界」展がスタートしました。約40点の構成ですが、大形の迫力ある作品が多く、また一点一点に見ごたえがあり、濃密な空間になっています。

この展覧会の構成は、昨年(平成25年)の夏に展示室2で行った特集展示「日本画の半世紀」が基本となっています。


(↑平成25年度 特集展示「日本画の半世紀」会場)

 この時に対象とした、1960年代から2000年代までの50年間は、抽象表現主義やアンフォルメル等の新思潮が次から次に日本の美術界を席巻した激動の時代でした。その中で日本画家たちは、顔料の厚塗りによる強固なマチエールを試みたり、描く題材で現代性を表現しようと取り組んだり、素材を見直し長所を活かそうとしたり、それぞれのやり方で日本画の可能性を追求してきました。そのような半世紀の流れを、岐阜県美術館の所蔵する現代日本画から厳選して、作品によってたどる試みが特集展示「日本画の半世紀」でした。コレクションの現代日本画をまとめて見る機会となり、「もっと作品があるなら見てみたい」という声もいただきました。

この特集を改めて企画展として組み直すところから、「今をいろどる~現代日本画の世界」展の準備がはじまりました。特集との大きな違いは、「現代」「今」をタイトルに入れ、まさに今、活躍中の作家の近作・新作を、構成に加えて、「日本画の現在」を意識した点です。

 ↑「今をいろどる~現代日本画の世界」展会場、
  神戸智行さん(左2点)、加藤良造さん(右2点)の作品

地元ゆかりの中堅どころの日本画家の中から、長谷川喜久さん(1964年~ 岐阜市出身・在住)、加藤良造さん(1964年~ 多治見市出身)、山本真一さん(1967年~ 名古屋市出身、岐阜市在住)、神戸智行さん(1975年~ 岐阜市出身)の4人にご協力をお願いし、新作を出品していただきました。長谷川さんは日展、加藤さんが創画会、山本さんが日本美術院に所属されており、神戸さんは無所属です。日本画の大規模な公募展を主催する3つの団体と、それらに所属せず別の方法で作品を発表するという、現在の日本画家の活動の在り方もこの4人に凝縮されています。

彼ら4人も含めて、岐阜県美術館の所蔵する日本画の中から、展覧会のために選んだ画家は18人です。その内訳は、地方公立美術館のコレクションに共通する特徴から、やはり地元ゆかりの人(出身者、在住者)に偏っています。ですから、当館所蔵品のみで現代日本画の全体像を語ることは不可能なのですが、それでも岐阜県は優れた美術家を輩出している土地柄なので、日展・院展・創画会という日本画の3団体それぞれに所属する画家を選び、また円空賞受賞作家である齋藤隆さんのような、団体を越えた活動をしている画家も含めて、一地方から見た現代日本画の流れを、ポイントをおさえながら展示しようと試みました。

「現代」の出発点をどこに据えるかも大きな問題です。この展覧会では第二次世界大戦の終戦以降としています。表現の要素だけに眼を向けるなら、モダニズムを含めた日本画の前衛的表現は、新日本画研究会(昭和9年)、歴程美術協会(昭和13年)、新美術人協会(昭和13年)といったグループ活動に見られるように、昭和戦前期から既に始まっていたといえるでしょう。しかし、日本画とは何か、現代社会の中で日本画を描くとはどういう意味をもつのか、自らのアイデンティティも含め、画家が根源的な問題として真剣に向き合ったのは、戦争によって断ち切られていた活動が再開した、1945年以降としてよいのではないかと思います。(青山)